新車情報終了

http://www.tvk-yokohama.com/sinsha/

三十年近くに渡って消費者に一番近い番組作りをしていた新車情報が終了。
新車情報とは、テレビ神奈川(現TVK)配信車好きよりも単なる消費者にこそ最も役立ったであろう自動車評論番組。
こぶし二つ半とかいつもの山坂道とか、この番組発のお約束も多く排出している。
車を買おうと思っている人は、三本和彦の評価をどきどきしながら楽しみにしてた人も多いだろう。


暮らしの手帳的な消費者側に立った評論を歯に衣着せぬ鋭いタッチで繰り出すのも痛快でしたけど、わたしゃ、この人の旧時代の頑固親父的な姿勢が何より大きな信頼を得る要素だと思う。
大出力の車に対しては、出力は麻薬であると説き、変にぶっ飛ばしてインプレッションをせず、一般の使用に即したテストをきちんとする。スペース効率を無視した奇異なデザインにデザイナーのエゴだとハッキリと物を言う。 何人の大メーカーの広報、開発主査が困って帰っていったか知れない。
 自動車評論の主流であるカーグラフィック誌が、翻訳調文章で外国車偏重の自動車文化グラフ誌に堕して行く同じ時期に、常に健全な消費者の代表者で有りつづけたのが本当にかっこいい。


私なんかは自分が車を持ち始める時期にバブル経済真っ只中で、社会の物の生産、開発に対する思考回路がおかしくなっている時期に車に対する興味が最高潮になってたわけですよ、個人趣味に向けての自動車生産に躍起になってる風潮の中で、消費者という個の集合体の最大幸福を説くその大人論説っぷりに、親父にぶん殴られたような気がしましたよ。 ああ、車って社会的なもんなんだ。 っていうか、社会的って言葉の本当の意味って何だろうと、そこで初めて立ち返って考えるようになりましたよ、だってバカでしたもん、わたし。


ディーゼルエンジンに対して、強く啓蒙してたのも三本さんの印象的な活動のひとつで、
昔のディーゼルエンジンなんて、大型のトラックに積まれてて、エンジン吹かすとブオーって真っ黒い煤煙吐き出す、きったないエンジンだったっすよ。 ノンプラグで、混合気の圧縮行程だけで燃やす、野蛮極まりないと思って、気嫌いしてました。 世界の真理のガソリンエンジンはちゃんと計算して燃焼行程が殆どずれない仕組みになってますし、あんまり煤煙巻き散らかさないしね。
でもね、それの殆どが偏見らしいですよ。
ディーゼルも作ったばっかりのディーゼルはあんまり煤煙でネェらしいんですよ、大型車は使用者の事業主がケチって最低限の整備しかしないから、あんなに汚いらしいのですよ。
で、ディーゼルは燃焼温度の関係からガソリン車についてる三元触媒っていう排ガス浄化装置がついてない。 メルセデスが電子制御で排気温度コントロールして三元触媒つけた車がEUの圏内では走ってるらしいのね。 更になんとディーゼル燃料(軽油)って原油から化学製品の材料になる素材を抽出して抽出して抽出しつくして、絞り粕みたいになった石油から取れるらしいのよ。 ココまでで、個人としてはともかく、社会の一員としては、全然ディーゼルOKじゃん?てなところでしょ? コスト的にも全然安くて、きちんと対策してやれば問題なく環境適応できて、全然OK。
 なんかこう表面的な部分というか、お客が、良くわかんないけどガソリンの方が良いみたいって印象や風説で、メーカーもディーゼル化を縮小しようとする方向に流れていくのに、異を唱えるってのはね、本当はメーカーがユーザー教育として取り組むべき事なわけですよ。 まぁ評論家の仕事でももちろんあるんだけど。


私は父性というのは、社会性の根幹に有ると思うんですが、保護や個や内向性の象徴としての母性と対極的にですけど。 積極的に社会を構成する要素としての象徴としての父性というものがね、私はハッキリと三本和彦さんに観て、いつかあんな親父にという人の何人かのうちの一人だ・・・と思いつつ、とはいえノンベンダらりんと生きてきたなという感じがしてまして。
残念ながら、まだ程遠い状態で、道のりは険しいわけですが、いつかなろう明日なろうですよ。
ほんとにね。 たいへんです。

三本和彦さんは、このあとは自分のために少しづつ時間を使っていきたいといいつつ番組を〆て下さいました。
本当にお疲れ様です。

余談
カーグラフィックの変遷は、結局後に同じ二弦社から、本格的自動車マニア生活誌NAVIが出版される過程で、なにやらゆり戻しがあったような気がするが、長期テスト車の中に殆ど国産車が無い時期もあり、やはり、消費者情報誌とは根本的に違う物だと思われる。